
消化管グループでは、消化管疾患,肥満症に対する減量手術,およびヘルニアの外科治療を担当しています。対象となる消化管疾患には、食道癌、胃癌などの悪性疾患のほか、消化管間質腫瘍(GIST)、平滑筋腫などの腫瘍性病変,食道アカラシア、逆流性食道炎などの良性疾患、ならびに十二指腸潰瘍穿孔や虫垂炎など救急疾患があります。全道各地の当科の関連病院ではこれらすべての疾患の治療を行っていますが、北大病院は胃癌学会認定施設A,および食道外科専門医認定施設に認定されており,我々は主に胃癌,食道癌に対し,ロボット手術をはじめとする最先端の手術を提供しています。また、「がん診療拠点病院」として、地域の医療機関と連携した治療を行っています。
北海道大学病院は国と都道府県が定める、「がん診療拠点病院」として、我が国に多い癌(肺癌、胃癌、肝癌、大腸癌及び乳癌)に対する、集学的治療(手術、放射線療法及び化学療法)及び緩和ケアの提供体制を構築しています。当科でも、地域の病院でがんと診断され治療が必要な患者さんの受入れと、手術後の患者さんの地域の医療機関への紹介などの、病病連携・病診連携の協力体制を整えています。
内視鏡外科手術では、小さな傷(ポート)をとおして、体内に腹腔鏡、あるいは胸腔鏡(カメラ)と手術器具を挿入し、モニターの画面を見ながら手術を行います。従来の手術と比較して、創(きず)が小さく、手術後の回復が早いことが特徴です。大学病院のスタッフには4名の日本内視鏡外科学会技術認定取得者を揃え(七戸俊明、新田健雄,和田秀之,パウデル サシーム)、ほとんど全ての消化管疾患に対して安全で体に対する負担の少ない内視鏡外科手術を提供しています.2013年に手術支援ロボット「da VinciTM」を導入して以来,胃癌,食道癌についてはロボット手術を中心に行なっており,より安全で,精緻な手術を提供しています.また,ロボット手術は、執刀医以外のスタッフも執刀医と同じ画面を共有できるため、安全で効率的な医学教育の実践が可能となりました。
当科では患者さんの予後及び術後の生活の質(QOL)の向上を目指した胸腔鏡、腹腔鏡補助下食道切除術を1996年より世界でもいち早く導入した実績があります。この術式は食道癌における胸腹部操作を内視鏡を用いて行うもので、従来の創の大きい術式と同様に完全切除が可能で体に対する負担が少ないことが特徴です。現在では合併症があり手術リスクの高いために手術適応があるものの、通常の開胸手術が受けられない患者さんや、化学放射線療法後の再発に対する救済(サルベージ)手術などを含めた、手術適応の食道癌はほぼすべて内視鏡外科手術が可能です。
なお、食道癌の治療は外科治療のほかに、内視鏡治療(粘膜切除)、化学療法(抗癌剤治療)、化学放射線療法、放射線療法など多岐にわたり、それらを組み合わせた集学的治療が重要です。北海道大学病院では当科での手術治療のほか、内視鏡治療(光学診療部・消化器内科)、化学療法・化学放射線療法(消化器内科・腫瘍内科)、放射線治療(放射線科)のいずれの治療に対しても専門家が連携を取り合い、協力しながら、病状に応じたきめ細やかな治療を行います。
胃癌は一昔前までは「日本の風土病」とも称されるほど高頻度にみられる疾患でしたが、近年のヘリコバクター・ピロリ菌感染に対する除菌療法の普及により、その罹患数は着実に減少しています。こうした中で、今後も胃癌診療の質を維持・向上させるためには、専門施設への症例集約、ならびに専門施設における外科治療および薬物療法の高度化と開発がますます重要となります。
北海道大学病院は、日本胃癌学会の認定施設Aとして、幽門側胃切除術、胃全摘術、噴門側胃切除術といった定型的な手術に加え、進行胃癌に対する拡大手術にも積極的にロボットを用いた低侵襲手術を行なっております。ロボット手術は、従来の開腹手術と同等、あるいはそれを凌駕する精緻な切除およびリンパ節郭清を可能としています。
さらに、術後の再発予防および長期予後の改善を目指して、術前・術後の化学療法や免疫療法など、最先端の補助療法の開発と評価にも取り組んでおり、ランダム化前向き試験を含む臨床試験を積極的に実施しています。
高度肥満症に対する減量手術(腹腔鏡下スリーブ状胃切除術)や,様々なヘルニア症例(鼠径ヘルニア,大腿ヘルニア,腹壁瘢痕ヘルニア,など)についても,最先端の低侵襲手術を提供しています.救急部からの交通外傷、急性腹症(絞拘性イレウス、胃・十二指腸穿孔、腸穿孔、SMA血栓症など)などの手術依頼も多く、日夜対応しています。現在いる大学スタッフ及びレジデントのすべてが、地方の中核病院での第一線の救命救急医療現場での実地経験を有しており、これらの救急医療・緊急手術を得意としています。手術は深夜にわたることもあり苦労も絶えませんが、その一方で、外科医としての実感を味わう機会でもあります。